『地球戦隊ファイブマン』第35話
放送日:1990年10月26日
脚本:藤井邦夫 監督:蓑輪雅夫
▼物語▼
山奥の牧場でおにぎりを作って持って来た百合子。
学は高原で牛を見ながら、母親の事を思い出していた。
「地球のこの高原で、お母さんはお父さんと初めて出会い、結婚したの。私たちの大切な思い出の高原。お父さんが撮ってくれたのよ。」
「(父さん、母さん。ここは2人の大切な思い出の高原とは違うかもしれないけど、あの時の写真にとってもよく似ている。
ここに来ると、父さんや母さんに会えるような気がするんだ。)」
学が物思いに耽っていると、百合子が声を掛けて来た。
「学さん!来ていたんですか。」
「うん。ちょっと疲れたもんでね。」
「久し振りにお父さんとお母さんに甘えに来たって訳ですか。」
「いやぁ…。」
「学さん、いくら長男でも子どもは子どもです。たまには親に本音を言って甘えてみたり、相談したい時があるに決まっています。
今日は家の牧場での〜んびりしてってくださいね!」
マグマベースでは、アーサーG6がポイント0311の地点に合身銀河闘士の反応が現れた事を健たち4人に伝えた。
「よし、行こう!アーサー、兄貴に連絡してくれ!」
「OK!」
ポイント0311の地点に向かう健たち4人。
すると、シュバリエが襲い掛かって来た。
「学はどうした?」
「うるさい!貴様なんか俺たちだけで叩き潰してやる!」
「私に感謝するが良い。お前たちが苦しまず、一瞬で死ねるように、コブラの猛毒を持った合身銀河闘士ヒョウコブラルギンを作って来てやった!」
シュバリエがそう言うと、合身銀河闘士ヒョウコブラルギンが4人に襲い掛かって来た。
4人は変身してVサーベルで攻撃しようとするが、ヒョウコブラルギンは圧倒的な力で4人を追い詰めていく。
ファイブブルーはVチェンジャーブレスの通信機で学に助けを呼び掛けた。
ホークアロー1で現場へ急ぐファイブレッド。
やがて、変身が解けて逃げて来た4人がファイブレッドの目の前で倒れた。
マグマベースでアーサーG6から手当てを受けた健たち4人。
「危なかったね。皆、どうなっちゃったんだよ?」
「…すまなかった。」
「変だぜ、兄貴。時々誰にも内緒で行方不明になるなんて…。一体どこに行ってたんだよ?」
「それは…。」
「秘密だから言えないってのか?」
「…すまん!」
「冗談じゃないよ!そのために俺たちはこんな目に遭ったんだぜ。
俺たち兄弟は、隠し事をしないで何でも相談しようって約束して、今日まで来たんじゃないか!」
「そうよ!だから私、子どもの時から何でも兄貴に話して来たわ。悲しい事も嬉しい事も。それなのに兄貴は!」
「お願い!兄さん、本当の事を教えて!そうしないと私たち、兄さんの事信じられなくなってしまう!」
「学、皆も心配してるんだよ。兄弟の団結を崩さないためにも…。」
「兄貴、秘密って…、まさか父さんや母さんに関係ある事じゃないだろうな!?」
「…健、数美、レミ、文矢。すまん!」
一方、シュバリエはバルガイヤーに帰還した。
ドンゴロスがガロアに酒を持って来させようとするが、ガロアはドンゴロスの足に引っ掛かってしまい、グラスを割ってしまうのだった。
やがて、メドーが現れてシュバリエに注意をした。
「何故にファイブブルーたち4人を葬らなかった?」
「あの4人、いつでも倒せます。私の標的はレッドのみ!」
「思い上がるな、シュバリエ!4人を葬る事も、私の命令だと忘れるな!」
「ははっ!」
ガロアも「せいぜい油断して、墓穴を掘るが良い!」とシュバリエを睨み付けた。
マグマベースのモニターにシュバリエとヒョウコブラルギンの映像が現れた。
「ハッハッハ…!口程にもないファイブマン。今度はファイブレッド、貴様が相手だ!隠れてないで出て来い!
出て来なければ、東京を無差別に攻撃して廃墟にしてやる!ハッハッハ…!」
学はそれを聞いて出動しようと呼び掛けるが、4人は応答しない。
「俺たち、怪我をしてるし…。」
「…そうだな。お前たちは怪我の治療に専念してくれ。」
そう言って、学はマグマベースを飛び出して行った。
ファイブくんもギクシャクした5人の関係を嘆いた。
シュバリエの居場所へ駆け付けて来た学。
すると、ヒョウコブラルギンが襲い掛かって来て、シュバリエが姿を現した。
「シュバリエ!無差別攻撃などさせるか!」
学は生身でヒョウコブラルギンと戦うが、追い詰められていき、変身した。
Vサーベルでシュバリエと戦うファイブレッドだが、追い詰められてしまう。
モニターでその様子を見て、4人に出動を促すアーサーG6。
「…信じ合えない者が、一緒に戦えるもんか。」
「でも、学は皆のリーダーじゃないか!」
「兄貴の馬鹿野郎…!」
シュバリエに追い詰められ、ボロボロになるファイブレッド。
「どうした、レッド?兄弟が応援に現れないな!ハッハッハ…!さては兄弟喧嘩でもしたか?」
「黙れ、シュバリエ!」
「図星か!たった1人のお前、徹底的に甚振り、葬ってやる!」
そう言って、シュバリエはバロックシュートをファイブレッドに撃ち込んだ。
居ても立っても居られなくなり、マグマベースを飛び出して行く健。
他の3人もそれを見て飛び出して行った。
学は高原まで逃げて来た。
「父さん、母さん…。僕はどうしたら良いんです?僕は長男として父さんや母さんと一番多く暮らした。だから、思い出も健たちよりずっと多い!
でも…、でも、それはできるだけ言わないようにして来た!健や数美、そして、赤ん坊で何の思い出もない文矢とレミが可哀想だったからです!
それは…、間違いだったんですか!?」
学の叫びを聞いて駆け付けて来た百合子。
「どうしたの、学さん!?」
「百合子さん…、僕はもうどうしたら良いのか分からない!」
「学さん…。」
学を捜しにやって来た健たち4人。
すると、百合子が声を掛けて来た。
「あなたたち、学さんの兄弟ですね?」
川原に場所を変えて百合子は4人に話をした。
「学さん、言ってました。文矢とレミは赤ん坊の時にお父さんとお母さんに別れて、思い出が全然ないので可哀想だって…。
いくら自分が説明してやっても、それは説明でしかなくて、文矢たちの思い出にはならない。むしろ、思い出がない事を悲しませ、僻ませるだけだって…。
だから、自分もお父さんとお母さんの思い出をできるだけ口にしないでおこう。学さん、そう考えたそうなの。
それに、学さん、高原に来てお父さんとお母さんの思い出に浸ってるだけじゃないんです。」
「他にも何か?」
「幻のお父さんとお母さんに、皆さんの事を相談してるんです。」
「俺たちの事を相談?」
「長男だって子どもです。あなたたちと同じ、両親のいない子どもには違いないのよ。
それなのに、長男だって事で兄弟に悩みを相談されて、解決してやらなければならない。
でも、自分は誰にも相談できず、それは辛いはずです。
私も、母に早く死なれて、ずっと父と弟たちの面倒を見て来たの。それで、学さんとお友達になって、今までお互いに励まし合って来たの。
お願い。学さんの気持ちも分かってあげて。お願いです。」
健たち4人は学の気持ちを理解した。
高原で立ち尽くす学。
そこへシュバリエが現れ、ヒョウコブラルギンも現れた。
学はヒョウコブラルギンに攻撃され、シュバリエのバロックビュートで首を締め付けられる。
そして、ヒョウコブラルギンに押さえ付けられ、とどめを刺されそうになる。
その時、健たち4人が助けに駆け付けて来た。
「遅くなってごめん、兄貴!」
「皆、ありがとう!」
「兄弟5人、1つに団結すれば、貴様なんか目じゃないぜ!」
「よし、行くぞ!」
5人は変身し、それぞれの個人武器でヒョウコブラルギンと戦った。
「兄貴は子どもの時から何でも教えてくれた!」
「いつも励まして来てくれた!」
「そして、皆の親代わりになってくれたんだ!」
それぞれ幼少時代の思い出を回想しながら、個人武器でヒョウコブラルギンにダメージを与えていく。
最後はファイブレッドがVソードでヒョウコブラルギンを追い詰めた。
シュバリエはゴルリン30号を呼び寄せ、ヒョウコブラルギンを吸収させて巨大銀河闘士にした。
ファイブレッドはファイブロボを発進させた。
飛び掛かって来たヒョウコブラルギンを殴り飛ばすファイブロボ。
左手から光線を発射するヒョウコブラルギンだが、ファイブロボは超次元ソードを出して反撃し、とどめを刺すのだった。
ファイブマンと百合子は高原へやって来た。
「この高原が父さんと母さんが初めて出会った高原。」
「ここが本当にそうなのかは分からないが、よく似てるんだ。」
「ここで良いじゃない。そう思おうよ。」
「うん。それから、父さんと母さんは…、」
「もう良いのよ、兄さん。」
「数美…。」
「兄さんの思い出は、兄さんの物だけで良いじゃない。」
「そう。長男だって1人で甘えられる思い出が必要だぜ。」
「皆…。」
「それから、兄貴。俺たちもう、とっくに大人だぜ。これからは何でも相談してくれよな。」
「分かったよ、皆!」
「良かったわね、学さん。」
「ありがとう、百合子さん。皆、君のおかげだよ。」
応えて微笑む百合子に、学は緑の笑顔を見た。
「…何か付いてる?」
「…あ、いや。」
学は大声で叫びたかった。父と母の名を。
いつの日かきっと会える事を願って。
▼解説▼
本話からOPのシュバリエのクレジットが訂正されています。
第31話から4話振りに星川緑が新規映像で登場していましたが、OPでは「星川みどり」とクレジットされていました。(アルバムの写真の緑はちゃんと若く見えていました。)
今回のサブタイトルは、健たち4人がマグマベースを飛び出して行こうとする所で挿入されています。
百合子を演じたのは、『チェンジマン』第45話でアイラを、『フラッシュマン』でイエローフラッシュ/サラを演じた中村容子さんです。
百合子はタカシ・マリコ・ヒロシという3人の弟たちがいるようで、「お友達」とは言っていましたが、学と恋人関係のようにも思えました。
Aパートの戦闘シーンでは、大英興業の採石場が使われていました。(Bパート明けに百合子が健たち4人を見つけたのも、この場所でした。)
第32話から3話振りにツインアレイ・パワーカッター・キューティーサークル・メロディータクトも使われていました。
Vチェンジャーブレスは変身後に見えなくなりますが、ファイブブルーが左腕に向かって声を出していたので、同アイテムの通信機を使用していたのだと思います。(ファイブマシンを呼ぶ時なども同様です。)
今回のガロアは食器磨きをしており、ドンゴロスから「役立たずのボーイ」と呼ばれていました。
前話に続いてノッペラリオン星人のバーテンダーも登場していました。(もちろん、ギンガマン・サイシアル・フリンダの姿も見られました。)
学がコスモスの花を見て弱音を吐くシーンでは、第1話の映像(20年前のシーン)が挿入されていました。
今回もCM前後共にアイキャッチの音楽が挿入されませんでした。
今回のアイキャッチは、学が泣き崩れる所で挿入されています。
第33話から2話振りの一斉変身シーンは、左から数美・健・学・レミ・文矢という並びでした。
戦闘シーンの途中でしっとりめの劇伴をバックに回想シーンが挿入される演出は、当時のスーパー戦隊シリーズではなかなか珍しいと思いました。
OPではクレジットされていませんでしたが、幼少時代の学・健・数美・文矢・レミも登場していました。
技名の呼称はありませんでしたが、5人がそれぞれの個人武器で攻撃するこの一連の流れは、ブラザーアタックと言えるかもしれません。
普通の超次元ソードでとどめを刺すのは、第31話から4話振りです。
今回は何も台詞がありませんでしたが、5人の絆を感じさせる倒し方だったと思います。
ファイブくんが登場するのは、本話が最後になるようです。
OPで声のクレジットはありましたが、ガロアどんは今回登場していませんでした。
今回から次回予告のナレーションは、ファイブマンが1人ずつ交代で担当する事になります。
今回は学が担当しており、最後は「皆で応援してくれよな」と締め括っていました。
余談ですが、本話の放送日の前日に、『機動戦士SDガンダム MK-Ⅴ』がOVAで発売されています。
本話の放送日の翌日には、『マジカル頭脳パワー!!』の放送が開始されています。
本話の放送日の2日後には、『王様戦隊キングオージャー』でハチオージャー/カグラギ・ディボウスキを演じる事になる佳久創さんが誕生しています。
ヒョウコブラルギンは初期名称が「ヒョウコブラギン」でした。(デザイン担当は篠原氏。)
スーパー戦隊シリーズでは『ダイナマン』第36話のマシンガンジャガーから7年振りのヒョウ怪人、『ターボレンジャー』のジャーミンから1年振りのヘビ怪人でもあります。
シュバリエが言っていたような猛毒の能力は披露せず、只管じわじわと甚振っていく戦法でした。
人語は喋りませんでしたが、声を演じたのは、第9話のガガーギン・第25話のライオギン・第32話のワニカエルギンの声を演じた岸野一彦さんです。
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- 2018/05/11(金) 15:54:52|
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